2008年11月2日日曜日

[37signals] ハーレー・ダビッドソンの復活に学ぶ

(原文:Learning from Harley-Davidson's comeback

1973年から1983年にかけ、ハーレー・ダビッドソンの市場シェアは78%から23%へと落ち込んだ。日本の業者による高品質で低価格なオートバイが洪水のように市場を飲み込んだからだ。価格面で日本の業者と競争するのは不可能と判断したハーレー・ダビッドソンは、価格ではなく市場価値と品質面において確固たるものを築かねばならなくなった。『ハーレー・ダビッドソンのビジネス実践に関するケーススタディ』ではハーレー・ダビッドソンを復活に導いた経営、マーケティング、製造技術について考察している。

同社は、単なる技術/機能よりももっと大切なものとして、顧客の心情面への訴えかけを始めた。

「ハーレーダビッドソンの真の力は、製品そのものを愛してやまない顧客に向けたマーケティング力にある」。ハーレーダビッドソンの社長兼CEOであるRichard Teerlinkは、オートバイとはアメリカの典型であると言う、「大胆な開拓者魂、西部の荒野、自分の馬、自分の行きたいところに行く、、、オートバイは鋼鉄の馬としての性質を帯びている。それは個人の自由と独立を示唆するものだ(Executive Excellence 6)」。ハーレーダビッドソンというブランドに対する顧客の忠節心は心情に基づいたものだ。同社のオートバイは単なるオートバイというよりむしろ伝説であると見なされている。アメリカの肖像的ブランドなのだ。同社のシンボルはアメリカ国旗と鷲の組み合わせを含んだパターンをベースとし、アメリカ人が享受している自由への情熱を反映したものとなっている。

日常から脱出し、なりたい自分になるという願い。競合各社が製品のテクノロジと機能を宣伝するのに対し、ハーレーダビッドソンが宣伝で打ち出したのは、神秘に満ちた外観・個人主義・何の束縛も受けずに走る感覚・伝説のバイクを自分のものにする優越感だった。ハーレーがあれば自分の思い描く世界で一生を過ごし、バイク野郎達との仲間意識というものを知る事が出来るのだ。

物語というものは、機能リスト以上に、かくも深き顧客の心とのつながりを作り出す。

機能リストなどここには無い

また、同社がいかにして価格競争および顧客の要求に阿る道を回避したかを知るのは興味深いところである。

ハーレーダビッドソンは、コスト面では海外の業者に太刀打ち出来ない事をすぐに理解した。ホンダは低価格製品さえ出せば、広告宣伝費の面で40対1でハーレーを打ち負かす事が出来たからだ。従ってハーレーは価格よりも価値に重きを置いた戦略を押し進めた。これはニッチ市場開拓と重厚な部品造りとを通じて生み出された。日本の業者がプラスチックを使う一方でハーレーは鋼を使い、このことが部品交換と拡張を可能にした。ハーレーは需要以上の生産を行わないよう注意を払った。今のところ、ハーレーの購入を希望する人は6〜8ヶ月待たねばならず、ハーレーの一年ものは新品に比べ25〜30%割高である。需要に応えることが出来ないという状況が、顧客の「どうしてもほしい」という傾向を作り出したのだ。結果、ハーレーは2003年までに生産能力を現在の倍、年間20万台にすることを計画している。

『ハーレーがギアをシフトする』[Fast Company] では、同社の成功についてと、同社がいかにして顧客との一生の長きにわたる関わり合いを構築しているかについて議論している。

ハーレーはHOG(ハーレー・オーナーズ・グループ)すなわちハーレー製オートバイ所有者の団体にまで学習の範囲を広げた。15歳に始まり一生の長きにわたる企業と顧客のつながりを作り上げるために設立されたHOGは、世界最大の規模を持つ、企業スポンサーの付いたオートバイ愛好家団体であり、32万5千人のメンバーと940の地方支部により構成される。ハーレーはHOGのセミナーで、7000人の地方支部長に向けて、いかにして会員加入させ、新メンバーの心を引きつけ、イベントをまとめあげるかという点について答える手助けをしたいと提案を行っている。

同社CEOは、製品を利用している真の顧客をつぶさに見ることが、ハーレーの情報収集における最も重要な手法であると言う。

我が社の情報収集において最も重要なのは、Daytona Bike Weekのような、ハーレーがスポンサーとして付いたイベントであり、そこでは多くのボランティア(議長兼社長兼CEOであるRich Teerlinkから、工場・事務所に勤める一般社員に至るまで)が顧客と直接にやりとりを行う。

「これはまさにリアルタイムな市場調査と言えるもので」とTeerlinkは言う「我が社の技術者は顧客が何をしているかを知り、改善点や試せそうな新しいアイディアといった材料を手にして戻ってくるのだ」

私たちはこんな試みについても思案している。チャンネルはそのまま。

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