2008年11月20日木曜日

[37signals] Drudge ReportがWebにおける最高のデザインのひとつだと思う理由

(原文: Why the Drudge Report is one of the best designed sites on the web

2週間前Twitterでこう発言した「私はいまだにDrudge ReportはWebにおける最高のデザインのひとつだと思っている。もう何年にもわたってだ」。同意してくれたのは数人にとどまり、大半はそうではなかった。悪い冗談だと考えた人もいた。私は冗談を言っているつもりは無い。

まずはっきりさせておきたいのだが、私のデザインに関する定義は見た目についてだけではなく、メンテナンス性・製作コスト・有益性・スピード・ページの趣旨といった領域におよんでいる。だがDrudge Reportは、その不細工さ加減を考慮に入れてもなお、見た目という点において匠の逸品だと私は思っている。良いデザインとは不細工なものなのだろうか? Drudge Reportがそのことを証明している。

以下に、何故私がDrudge ReportをWebにおける最高のデザインの一つだと思うのかについて、順不同で幾つか理由を述べる。



変わらないということの持つ力

人々はいつも、時代を超えたデザインというものについて議論する。だがそこで指摘されることの大半は、時代を超えていると思われているものも結局は時代の烙印を押されるものなのだということだけである。だがその一方でDrudge Reportは、時代を超えるものがあるのだということを立証してきた。等幅フォントで・大文字で・白と黒だけで書かれた見出しの集まり、という何の変哲も無いリンク集が、いかなるトレンドをも、いかなる一時的流行をも、いかなる世間の動向をも、いかなる時代をも、いかなる「デザインべからず集」をも乗り越えてきたのだ。古臭くはないが新しくもない、Drudge流とでも言うべきものなのだ。そのデザインは、少なく見積もっても1997年以来変わっていないし、私が思うに、そのデザインの源流はさらに古くまで遡るだろう。10年にわたって不変のままで生き延びそして繁栄出来るサイトは幾つあるだろう? Drudge Reportは他に例を見ないものなのだ。

直球勝負

ここには込み入った仕掛けなど無く、欄ごとの分割も無く、入り組んだリンクも無く、閲覧にあたって何ら特別なテクノロジを必要としない。ページ上には、あるべきものがあるべきところにあるだけだ。「だけどごちゃついてるじゃないか!」と諸君は言うかもしれない。ならば私はこう言いたい「ごちゃついて見えるけど余計なものは一切無い」と。私はこういった直球勝負の姿勢を過小評価しようとは全く思わない。

独自性

諸君がDrudge Reportにいるとき、諸君はDrudge Reportにいる(訳注:わけわかんないかもしれませんが、読み進めるとわかります)。どこにいるかについて疑いの余地はない。Drudge Reportにおいて、サイトデザインはもはやイコンと化しているのだ。他のニュースサイトでこう主張出来るものがいくつあるだろう? CNNMSNBCFOX NewsABC NewsCBS News、その他もろもろの著名なニュースサイト/ニュースネットワークから社名ロゴを取り去ったら、どれがどれであるか判別するのは困難だろう。これらはどれも同じような、ニュースサイトの標準的ルックアンドフィール(訳注:見た目や操作感)にて詰め合わされた類のものなのだ。異彩を放つものも無くはないが、NYTWSJですらこれほどの独自性はない。Drudge Reportのデザインには比類なき独自性がある。

重要度の明記

多くのニュースサイトはもはや腑抜けてしまった。大きな話題に関して心底から主張する事を恐れているからだ。要約文があっても明解さに欠けていたり他と食い違いがあったりする。大きく書かれてはいても確信を持って書かれてはいない。彼らは断言することを避けているのだ。一方、Drudgeは大きな見出しを付けてこう言う「旬の話題」。これによりニュースに関して今現在何が重要で何がそうでないかが示される。Drudgeは独断的編集者と呼ばれる事を怖れておらず、サイトのデザインがそのことを完璧なまでに強調している。大胆かつリスキー、そして心底純真であること。それがDrudgeのデザインなのだ。

良き混乱

通常、Drudge Reportの記事はArialフォントで"font size=+7"と大きくスタイル指定された全て大文字で書かれた見出しで始まる。時にはイタリック書体になることもある。あの悪名高きサイレンを付けて、大文字化を解除し、もっとでかでかと表示することもある。

その下には3本の縦組になった見出し列がある。見出しは大文字だけで書かれたり、そうでなかったりする。写真付きの見出しもあればテキストだけの見出しもある。通常よりも喧嘩腰であったり扇情的である見出しについては赤で表示することもある。通常は一番上に大きな広告があり、他のわずかな広告達は欄内にばらまかれる。

記事の配置方法については、たぶんこの記事は読者がより興味を持つだろうと編集者が考えた記事が上の方に来るというのがあるだけで、記事がグループ化されたり組織立てて構成される事は無い。それだけなのだ。諸君の視線は、何か面白そうな記事を目がけて画面中を飛び回ることになる。このデザインはページ上をうろつき回り、思いがけぬ発見をすることを奨励しているのだ。

このサイトは、新聞の切り抜きがむき出しの床に散乱した、混沌然としたニュース編集室に感じが似ている。これがわくわく感を、そして良いデザインを作り出しているのだと思う。

Breaking News(ニュース速報) がニュースをぶちこわし(break)にしている

諸君は最近MSNBCやCNNのニュース速報を見たことがあるだろうか? 今や、あらゆることがニュース速報で流されるようになった。ニュース速報は「ほにゃららが報道に発表したところによりますとあーだこーだです」と言うだけのものになってしまっている。本来ニュース速報とは非常に大きな、重要もしくは人目をひくような今まさに起こっているニュースを意味していた。しかし著名なニュースサイトはニュース速報の重要性に水を差して薄めてしまった。MSNBCやCNNのページに行くとニュース速報の印(通常、赤や黄色で表示される)があるのだが、これによりこの記事は無視してもいいというのが容易にわかる。オオカミ少年のように、あまりに何度も速報・速報と叫び続けているからだ。だがDrudge Reportでは、サイレンをひらめかせ赤い大文字でがなり立てる大きな見出しを見つけたら、それがニュースと呼ぶに値するものであるということがわかるのだ。

一人で出来るということ

このサイトは、たまにパートタイム投稿者に助けを求める時以外は、Matt Drudgeがフルタイムで張り付いて運営している。もしこのサイトが5ページ、10ページ、30ページといった大規模なものであったら、彼はそれをこなしていくために人員の追加やテクノロジの導入を余儀なくされた事だろう。

ニュースがないのは良いニュース

Drudge Reportは見出しを集めたサイトだ。いわゆる「コンテンツ」はサイト上には存在しない。だが、それがいい。見出しそのものもニュースたりえるのだ。Drudgeは記事を書かずして記事を伝える。実際、Drudge ReportはWebにおいて、見出しと写真だけで記事を伝える事の出来る唯一のサイトかもしれない。そういったことがデザインという形をとって正しくやりとげられている。

人々が戻ってくるよう、ひとまず追い出せ

実際のところ、Drudge Reportにコンテンツ自体は一つもない。時々メールやメモをサイトに投稿する事もあるが、そのうちの99%は他のニュースへのリンクだ。彼のサイトは諸君に再びサイトに戻って来させるために、ひとまずサイトから追い出すようデザインされている。どこか他のサイトへ行くために彼のサイトを訪れる頻度が上がればあがる程、更に他のサイトへ行くために彼のサイトへ戻ってくることになる。諸君が頻繁にDrudge Reportを訪れるのは、諸君が頻繁にDrudge Reportから追い出されるからなのだ。「人を追い出せば追い出すほど、彼らは戻ってくる」というのがトラフィックを産む秘訣なのである。

表示が軽い

諸君がDrudge Reportを訪れたとき目にするのはDrudge Reportだけだ。隙間を埋め尽くす広告は無い。ページの読み込みは一瞬だ。バッファリング(訳注:動画等の円滑な再生のためにあらかじめファイルの一部を読み込んで蓄えること)も無い。今すぐ必要なもの以外はなにもない。Drudge ReportはGoogleやCraigslistのように高速だが、これは、たった一人で3百万人/月のユニークユーザを持つサイトを運営しているという点から見て相当な離れ業だと言える。なお3百万人/月のユニークユーザという数字は、ビジター数にすれば数億人/月にのぼると解釈して良い(ソースはこちら: CNN

維持コストが小さい


Drudge Reportのデザインは凝ったCMSを必要としていない、というかCMS自体必要としていない。全て手書きだからだ。経費は最大でもおそらく$2000/月程度だろう。年間数千ドルの経費で数百万ドルの収入を産む。実に良いデザインじゃないか。

単一ページ構成

Drudge Reportは1ページだけである。訪問してくるユーザの関心はその1ページ、大見出しと3本の縦組になった見出し列で出来た1ページに絞られる。人々が何をどうやって見ようとするかについて、彼は正確に把握している。そこにはデザイン変更が済んでいないとかスクリプトでエラーが発生するといったような怪しいページは存在しない。見るページがひとつなら作業するべきページもひとつ。そのまんまだ。あるべきでないものをあらしめるために苦労する必要はない。

これが彼をして偉大なる生命体たらしめている

公表された広告有効率やトラフィックの数値によれば、Matt Drudgeは「年間100万ドル以上」を生み出しているとされている。インターネット上にある、白黒の1ページとしては悪くない数字だ。

以上、私がなぜDrudge ReportをWebにおける最高のデザインのひとつであると思っているのかという点について理由をいくつか述べた。じゃ、いってみようか。

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