David はこう問う:
最近の景気後退が私にこんな疑問を投げかけている...37signalsがやっているような「現実的になれ」という考えに基づく小規模ビジネス形態は、景気後退に対抗するためにより有効なものなのか、それとも劇的な変化といった点において、何10億ドルもの損失や何千件にものぼる雇用削減といったものには遥かに及ばない無力なものなのか? 君の知る範囲で、成長の鈍化やキャンセルの増加といった面での直接的な影響はあった?一般企業は不景気にどう対処するだろう? 支出に目を光らせ、雇用を削減(もしくはクビに)し、時間の浪費を抑え、コア事業に集中し、複雑性の排除を進め、長期にわたって結果の出ていないプロジェクトを縮小する代わりに、決算表の純利益の部分に速攻でインパクトを与えられるような、手っ取り早く利益の得られるプロジェクトに集中し、職務を統合して贅肉をそぎ落とす。
実はこういったことが「現実的になれ」の全てなのだ。小規模である事、質素倹約を旨とする事、少数のコア事業だけに専念する事、手っ取り早く利益を上げる事、意思疎通を妨げ複雑さをもたらす抽象性については排除する事、やれる事では無く、するべき事をやれという事、等々。我々は、こういった考え方が根付いている会社はどんな時でも金回りが良いものなのだと信じている。困難な時代ならなおさらだ。
課金する方がより確実
「現実的になれ」のもうひとつの信条は、製品について課金する事だ。あなたは何かを作り、客はそれに対価を払う。収入と客を結びつける事により、お金を払って製品を買ってくれる客にとって本当に意味のあるものを作ることに専念できるようになる。これが、困難な時代を乗り切るための(企業とユーザの)健全なる協力体制のあり方なのだ。
広告主が出資者だったころとは違うのだ。製品ユーザが金を出すわけでは無かったころは、君たちは開発戦略的に不利な状況にあったのだと言うことが出来る。ユーザを視野に入れた製品改良だけでは済まず、広告主をも視野に入れなければならないからだ。そのため、開発パワーを2つの異なるグループを満足させるために分散せざるを得なくなる。広告主とユーザの目指すところが一致することはたしかにあるが、確率は低いだろう。君たちは今、私が「人々」を「ユーザ」と呼んでいることに気付くだろう。製品に金を出さない人は客ではなく単なるユーザなのだ。開発原動力はこの違いにより大きく変わってくる。
広告ベースのビジネスについてもう一点付け加えると、このビジネス形態は景気後退の際に大きなリスクになる、というのがある。事が悪化した場合、真っ先に削減されるのが広告予算だからだ。ビジネスが広告予算に基盤を置くものであった場合、落ち込んだ市場において、非常につらい状況に身を置く事になるだろう。
人員削減と社員の士気
もう一つ言うと、必要以上に大きくて末端まで管理が行き届かない(訳注:組織が大き過ぎて人心把握が出来ていないということ)会社が困難に直面した場合、人員削減はより深刻なものになる。1%の人員削減程度ではなく10%、20%あるいはそれ以上となるのだ。人員削減は従業員の間に恐怖と不信を産むが、それは企業にとって他の何よりも重荷となる。人員削減は時にプラスとなることもあるが、通常は、社員の士気に計り知れないダメージを与えるという点でマイナスとなるものだ。同僚が去り、チームは解散、プロジェクトは停止。人々は職探しを始め、会社への忠節心にひびが入る。他の仕事を探している状態で眼の前の仕事に身を入れるのは困難というものだ。
金を使わずにマーケティングする
「現実的になれ」というのは開発競争において、共有をやめる事(訳注:すみません。sharingの具体例が思いつきません)、ユーザ教育に金をつぎ込むのをやめる事(訳注:会場を借りて製品説明会をするような事はやめろということか?)、ユーザの貢献に頼るのをやめる事(訳注:くちコミ等においてユーザに頼るのでなく開発者自ら発言せよということか?)、といった事とも関係がある。広告費と販売促進費に金を注ぎ込む泥沼のような戦争にはまり込むのは、我々としてはお薦めしない。そんな冷戦はみんなも願い下げだろう。それに、広告費がカットされたらどうなる? どうやって広告以外の場所で製品の売り文句を出せば良い? たぶん思いつかないだろう。
聴衆に製品について教えたり共有したりコミュニティへの貢献に頼るかわりに、ドキュメントを書き、Twitterで発言し、可能であればどこででも発言する事だ。きみが直接語り、耳を傾けさせる事の出来た相手というものは、金を注ぎ込まなければメッセージが届かないような人々よりも、はるかに忠節心に富んでいるわけだから。
どうすればいい?
ここ数年、我々の成長は少し鈍ったが、ビジネスはこれまでになく順調だ。2004年以来毎年収入は倍増してきたという背景もあり、多少の鈍化があってもまだまだ大きな成長が可能だ。まだまだ利益が見込めるし、借金も無いし、人員削減の必要は無いし、開発費削減の必要は無いし、プロジェクト破棄の必要も無い。
昨年来、当社の製品はそれぞれ良好な成長ぶりを示している。2月にリリースしたマルチユーザ版のおかげで、今年のBackpack月次収益は倍に増えた。Highriseで新規に立ち上げたDeals機能についても同様に、売り上げに実に好ましいインパクトをもたらした。Campfireも地味ながら成長を続け、Basecampも5歳の誕生日を迎える2009年2月4日に向け、健全に成長の途上にある。
結局そんな感じで、現状のもたらしている事態とは関係なく、我々はうまくやっている。外で何が起こっているかについて何の注意も払っていないという訳ではない。外は荒れてるなぁ、と感じる程度だ。そして、もっと荒れるだろうなぁ、とも感じている。しかし同時に、我々は他の多くの企業よりも上手くこの嵐を切り抜ける事が出来ると確信している。スタッフは少数だし、経費も小さいし、借金も無いから。そして、よろこんでお金を払ってくれる多種多様な顧客がもたらしてくれる収益によって成長を続けるだろう、ということも。
このつらい時期だからこそ「現実的になれ」という原則、つまり、責任ある支出管理、経費節減、コア事業への集中、無駄の排除、抽象的にしないという事、複雑性の排除、明確な考え、オープンなコミュニケーション、といったものにこだわっているのだ。
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