37signalsではWebベース製品を月次サブスクリプション型で販売している。また、最初の一ヶ月についてはお試し期間として無料で提供している。
このモデルはどんな時であっても有効であると我々は考えているが、景気の悪い時には特に上手く機能する確信している。状況が厳しくなると人は支出を抑えるものだということは誰の目にも明らかだが、人々が支出を抑えるにあたってどう振る舞うかを理解する事もまた、どのビジネスモデルがより有利であるかを判断する際に重要になる。
ソフトウェア産業におけるビジネスモデルは多様だ。良く知られたものをいくつか挙げてみよう
- 無料
- 無料(広告ベース)
- 一回払い(無料アップグレード)
- 一回払い(有料アップグレード)
- 月次サブスクリプション型
- 年次サブスクリプション型
通常、人々は現在支払っているものをカットする前に、新たな支出をカットするようだ。すでに支払いを始めているものについては、それが何であれそのまま支払い続けるという状況がしばしば見られる。新規支出を排除する方が既存支出を排除するより容易だからだ。
例えば何か新しいものの導入を検討していた場合であれば、導入は保留される。無くてもどうにかなるものであれば、大抵の場合は、無いままで済ますようだ。大規模アップグレードが出た場合であっても、なんだかんだと理由をつけて先延ばしするか、もしくはただ単に不要と見なして導入しないものだ。
だが、すでに導入し支払いを行っているサービスであれば話は別で、大抵はサービスの利用を継続するようだ。料金プランが安い方にダウングレードしたり値切ったりする事はあるかもしれないが、サービスが有用なものである限り人々はサービスを継続利用してくれるものだと考える方が理にかなっている。
一回払いには問題がある
一回払いの問題は、ひとたび料金が支払われたらそれっきり、という点にある。人々が財布のひもをきっちり締めている苦しい状況下において、新規顧客の減少は収入の減少を意味する。極端かもしれないが新規顧客ゼロということもあり得るのだ。すなわち収入ゼロということだ。3ヶ月間にわたって新規顧客が得られなかった場合、3ヶ月間にわたって収入はゼロとなるわけだ。資金が十分であれば話は別だが、3ヶ月も収入ゼロで会社を運営すれば経営悪化は免れない。
年次サブスクリプション型は中途半端
年次サブスクリプション型は一回払いよりマシである。新規顧客が得られなくても定期的な収入が見込めるからだ。だが、年次更新という形態は月次更新に比べて初期費用が高くつくので、企業は契約更新について慎重になるかもしれない。契約更新の際に価格の折り合いがつかなかった場合、顧客は交渉の場において強気で出たり、契約破棄をちらつかせて脅したりするだろう。単なるはったりかもしれないが、不景気ともなれば、顧客を失うリスクをあえて取るのはしんどい。
月次サブスクリプション型の利点
新規支出というものは往々にしてカットされるので、新規顧客ゼロという期間がありうるのに対し、月次サブスクリプション型のビジネスモデルであれば、既存顧客から毎月定期的に収入を得られる。
もし10ドル/月のサービスを利用する顧客が5000人いれば、たとえ新規顧客登録がゼロであっても毎月50000ドルの収入が見込める。既存顧客のうちの何人かが支出抑制の為に契約をキャンセルし始めたとしても、月々の収入は他の顧客から依然として入ってくるのだ。月次サブスクリプションに基づくキャッシュフローは選択肢のうちでフローの将来予測に最も役立つものだ。
月次サブスクリプション型には他にも、新規顧客にとって導入コストがより安く済むという利点がある。年次サブスクリプションは長い目で見れば月次サブスクリプションより安くなるが、この不況下においては年次サブスクリプションの初期支出の大きさに多くの人が躊躇するだろう。人々の願うのは支出削減であり、年次サブスクリプションは確かに一面ではそれに合致するものの、人々の念頭にあるのは短期支出であり長期支出ではない。不況下においてものをいうのは短期的視点のもとで削減をするほうであり、ゆえに月次サブスクリプション型は何よりも安全なのである。
複合型はどうか?
いくつかの料金プランを組み合わせて顧客に提供する企業もある。月次サブスクリプション、年次サブスクリプション、もしくは終身サブスクリプションといった巨額の前払いを行うもの。私の見るところでは、月次サブスクリプション型さえあれば人々は良しとするようだ。37signalsでは支払い形態のオプションに年次サブスクリプション型は無いが、登録時にアカウントに関してまとめ払いをする事が可能だ。このやり方であれば、あらかじめ500ドルまとめ払いしておけば毎月のクレジットカード請求書にびくつく必要はなくなる。ひとたび支払いを済ませてしまえば年度予算の残りを気にする必要もないし、来年も引き続き、新たな追加支出をすることなく利用出来るから、という理由でこの支払い形態を好む人もいる。
これはあくまでも助言
以上述べたような考え方は大げさなものでもなんでもなく、あくまでも、顧客に提示する支払い形態の如何が不況下における企業の生存可能性について重要な意義を持つ、ということを諸君に思い起こしてもらうための助言にすぎない。
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