(原文: A whale of a tale)
週末にお隣さんの家を訪問した。彼は私の両親と同年代(いわゆる中年)なのだが、誰もが認める脱線王、つまり話をどんどん膨らませる人なのだ。どんな問いを投げかけても、彼はあらゆる手練手管を用いて5〜10分くらいの法螺話を仕立て上げるのだ。その法螺話がもし素晴らしいものでなかったとしたら、迷惑千万といったところだろう。
彼のもとを訪れたのは、彼の苗字の正しい発音を聞きたかったからなのだが、この苗字というのがまた実にユニークなものだった。彼は私の質問にあっさりと一言だけ答え、その後こんな由来を語ってくれた。
彼のあだ名は、周知の事なんだが、Portuguese(ポルトガル人)だ。彼の父方の曾祖父はアゾレス諸島からニューイングランドへやってきた移民で、移住後に捕鯨を始めた。(お隣さんは、当時、捕鯨は完全に合法なものとされており、いかに多くの人が家の灯りとして用いるために鯨から取れる油を必要としていたかについて、脱線王の名に恥じぬ抜け目の無さを以て指摘した。脱線に次ぐ脱線といったところだね!彼がこの手のすべに長けていることはこれでおわかりだろう)
彼の曾祖父は銛打ちとして乗船していた。ある日のこと、セミクジラ(この鯨は彼の話によると、その名(訳注: right whale)の通り、まさに"right"、つまり「当たり」な鯨なのだそうだ。セミクジラからは莫大な量の油が採れるからだ)漁を終えた時に、ある一頭の鯨を見出し、それを打つために船を進めた。その鯨がセミクジラでなく大きなマッコウクジラであることに気付いて彼らは愕然とした。というのも、その大きなマッコウクジラがものすごい速さで彼らのボートを引きずっていたからだ。その鯨はボートを沖あいにまで引きずり回した後、海に潜って銛綱を引きちぎり、それからボートの真下から飛び上がって真っ二つにし、その巨身を宙に躍らせた。(誰がどう見ても『白鯨』だよね?)
このボートは14フィートほどの長さの櫂を備えた大きめのものだったが、彼の曾祖父はこの櫂のうちの一本に縋り付いて三日半にわたって漂流した後、とある無人島(これ重要ね)に流れ着いたのだった。捜索隊が彼を見つけ出し救助するに至るまでの更なる数日間を、彼は口に出来そうなものなら何でも食べて生き延びたのだった。
苗字の正しい発音を聞いただけなのに、返ってきた話はこのありさまなんだ!
家族にまつわる言い伝えというものの大半がそうであるように、私はこの話にも少なからぬ誇張があり、あやしいもんだと話半分で受け取った。でも実は、私はこんな感じの、家族の歴史に関する話を聞くのが好きなのだ。本を読んで歴史を知るという手もあるが、数世代にわたって家族の間で語り継がれてきた話を聞くという手もあるのだ。どういうわけか、こっちのほうが生き生きとしている。
みんなの家族にはどんな言い伝えが残されているのかな?(全然知らないということであれば、両親かじいちゃんばあちゃんに聞いてみるといいよ。存命中であればだけどね。どんな話を彼らが共通して知っているかを目の当たりにしたら、君はびっくりするだろうね)
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