(原文: Big Three: Clean up your dealerships)
みんなと同様、私も自動車産業ビッグスリーの抱える問題について目を通している。多くの再生案が飛び交っている。燃費の向上、デザインの刷新、車種の削減、経営陣の刷新、合併、潰しちまえ、などなど。
これら提案された解決案のうちのいくつかは良い影響を与えるかもしれないが、私としてはむしろ、あまり議論されている様子が見られないちょっとした点について述べたい。自動車販売店において車を購入した際に私が体験した事についてだ。
Webの世界では顧客体験に関する多くの議論がなされている。それは使いやすさと利便性に関する議論であるが、議論は結局のところ、顧客体験全般についてあてはまるポイントに帰結するようだ。「ブラウジングしたり調査を行ったりサイトで何か買う際にどんな印象をあたえるだろうか?」とか「体験したことについて顧客はどう感じただろう?」といったポイントに。
販売店について
私はクルマ好きだ。ここ数年でたぶん15件くらいの販売店に足を運んでいる。多くのクルマをチェックし試乗してきた。ドイツ製も、日本製も、イギリス製も、スウェーデン製も、アメリカ製も。顧客体験について考える際のネタとなりそうな多くの顧客体験を積んできたのだ。
例外無く言える事だが、顧客体験という点においてアメリカ製自動車の販売店は最低だ。小汚く、机の上はごちゃつき、装飾品は古臭い。販売店そのものが中古車のような雰囲気なのだ。商談のやり方は押し付けがましく、販売員はクルマに関する興味も知識も欠如している、ということにも私は気付いた。
直接の関係は無いのだが、的を射た例をあげておこう。最近Audiの販売店に行った事はあるかな? 美しいのだこれが。モダンで、風通しが良く、清潔で、友好的で、自然光にあふれ、木の床は明るく、見て回れるショールームがいっぱいある。そのうちでいいからAudiの販売店に行ってみて、それから地元のCadillac販売店に足を伸ばしてごらんよ。
市場にて
最近、オフロード向けのトラック/SUV(スポーツ多目的車)を見に、市場へ足を運んだ。私が合格点をつけたのはToyotaのFJ Cruiser、HondaのRidgeline、JeepのWrangle。結局、目的と用途に一番ぴったりなWranglerを買う事にしたのだが、その時の販売店での体験について話をさせて欲しい。
まずJeepの販売店に足を運んだ。結局のところ2店、全く別の販売店に足を運ぶはめになった。2店ともにエンジンのオプションについて私に誤った情報を伝えた。馬力といった類の基本的な点についてだ。販売員のデスクに向かい椅子に腰かけたのだが、その机はごちゃつき、整理整頓されておらず、書類や付箋紙や引き裂かれた紙が地層のように重なっていた。天井は低く、照明はひどく人工的な冷たいものに感じられた。全てのものが古びており、そのうちのいくつかは完全に放置されていた。ビジネス向けの快適なセッティングとはお世辞にも言えない。
Toyota販売店はモダンで、活気があり、きれいだった。販売員は、彼らのプレゼンを思い起こせばわかるように、服装を統一していた。内装は配慮が行き届いた快適なものだった(レンガ舗装の床、むき出しになった木の梁、等)。顧客を歓迎する心に満ちた明るい空間がそこにはあった。Jeepの販売店とはうってかわって、Toyotaの販売店は私に窮屈さを感じさせる事は皆無だった。Jeepの販売店では、クルマを良く見ずに決めろとでも言うかのように室内にクルマが何台も押し込められていた。Toyotaの販売店ではぶらつきながらクルマの品定めが出来るようショールームが準備されていた。Toyotaの販売員そのものはJeepよりちょっとマシかなという程度だったが、少なくとも彼らの机はきれいで、誰に見せても恥ずかしくないものだった。
Hondaの販売店にも2店行ってみた。ともに積極性に富み、若々しさを感じさせた。活気があった。そこにクルマを見に来る人は、Hondaのクルマが見たいからこそ、そこに来ているのだ。販売員はHonda車を売る事に意欲を燃やしているというのが私にはわかった。販売員は生き生きとし、かつ熱心であったが、押し付けがましくなる事はなかった。Toyotaの販売店と同様、ショールームの天上は高く、開放的で風通しの良いものだった。大きな窓から充分に自然光が差し込んでいた。商談にあたっても、急き立てられる感じは全くなかった。現場で応対してくれた販売員にはさしたる印象は持てなかったが、彼らはちゃんと私に正しい情報を提供してくれた。
結局私はFordの販売店で中古のWranglerを購入した。セールスマンは良い人で、私の特注にもわざわざ足を伸ばして対応してくれたのだが、彼の机はごちゃついており、販売店の壁はここ10年というもの清掃やペンキの塗り直しが行われていないように見えた。味気ない灰色の12x12インチタイル貼りの床はひどくへたっており、新装当時のそれとはおそらく比べ物にならない状態だった。全てが二流であると感じさせた。
これが問題なのだ
もちろん人それぞれに体験は異なってくるだろう。完全なフランチャイズではない販売店もいくつかはあるだろう。しかし、ブランド間の差ははっきりしている。ToyotaとHondaには配慮というものが感じられる。それはデザインの中にも見て取れる。一方、JeepとFordの販売店は、もともと商用目的で作られたものでは無いんじゃなかろうか?という印象すら与える。私の行った事があるオフィスビル全てについて言える事かもしれないが、印象に残るものが皆無なのだ。入り口に立ち、見て回り、情報を入手し、実際に椅子に腰掛けて購入を考える、といった顧客体験全般についてだれも考慮していないように感じた。
これが問題なのだ。これは大きな影響をおよぼす。特に、競争の激しいビジネスにおいて。アメリカ車の販売店は古臭く、日本車のそれは若々しい。アメリカ車の販売店は小汚く、日本車のそれはきれいだ。アメリカ車の販売店は暗く陰気で、日本車のそれは明るく(ほとんどが自然光によるもの)風通しが良い。こういった、顧客が購入行動を行う場の状態が問題なのだ。食品を買う場合も、電化製品を買う場合も、衣類を買う場合も、そして車を買う場合もこういったことが問題になるのだ。
ビッグスリーが製品に関してしなければならないことは山積みだが、同様に、ショールームに関してもしなければならないことが山積みだ。せっかく製品を改善しても、ぼろぼろの店舗に置くというのでは問題の解決にはつながらないだろう。
2008年12月5日金曜日
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