2009年11月21日土曜日

[37signals] 私は仕立て屋さんです

(原文: I'm a tailor

あなたは一日中何をしているのと人に聞かれると、私は自分の言いたい事をまとめるのに苦労する。設計したり、編集したり、考えたり、検証したり、助言したり、教えたり。私が台無しにしてしまうものもあれば、私がうまくまとめるものもある。

でも私が一日の大半を費やすのは、生地のふちを落としたり、裾を折り込んだり、アイロンをかけたり、切ったり、プレスしたり、ぴったり合わせたり、といった作業だ。私はソフトウェア仕立て屋さんなのだ。

そして私は、これこそ私の天職なのだと思うようになった。私のチームは素晴らしい。これをしろなどと彼らに言う必要は無い。もしソフトウェア版ファンタジーリーグ(訳注: 自分の思い通りの選手を選んで野球やフットボールのチームを作るシミュレーションゲーム)があったとしても、私のチームは誰も入れ替えるつもりはない。

だが開発・設計を進める中では、作ったものが思ったほどしっくり来ない時もある。その文は短くならんかなとか、その造形要素は切り詰められないかなとか、その処理ではこのステップを省略出来ないかなとか、アイロンをかけて頑固なしわを伸ばすようにUX全般にアイロンをかけてこまごまとした問題を解決できんかな、と言った感じで。

仕立て屋さんはテーラーメードの服をあつらえることも出来るのだが、それよりも他の仕立て屋さんが作った服をお客さんに合うように仕立て直す方に大半の時間を費やしている。これはまさに私が大半の時間を費やしている事、すなわち私のチームが作ったソフトをお客さんに合わせて仕立て直すのと同じ事だ。

こういった作業の事を「編集」と呼ぶ人もいるが、私は「仕立」のほうが近いと思う。ということで、これから私は自分の仕事についてこう説明することにする。

私はソフトウェア仕立て屋さんです。


訳者コメント:
ソフトウェアのコモディティ化というのは、こういった姿勢から産まれてくるんじゃないかと思うわけです。確かに仕立てというのは生地によるエンジニアリングですしね。

そういう観点からすれば、書というのは平安時代においては最も重要なエンジニアリング対象だったと言えるでしょう。書き順の最適化や省略記法といった、日本流の書というシステムにおける基本ライブラリが空海から行成にいたるエースプログラマ達によって開発されたわけです。

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