2009年12月19日土曜日

[三浦梅園] ぴちぴち

しからば、神、その状、いかがぞといへば、唯活潑々地、俗にいはゆるぴちぴちなり。条理の道、次第に天地を剖析し、剖所にしたがひて其反態も変化を尽し、然して物の分るる処、各々一神物を成立すれば、其なりの出来様と其ぴちつきのし様とは千態万貌、異なれども、火は火の体をなして火のぴちつきをなし、水は水の体をなして水のぴちつきをなし、魚鳥、魚鳥の体にして魚鳥にぴちつき、天地、天地の体をなして天地にぴちつく。其ぴちぴちをさして鬱渤(* 渤は代字)といふ事にして、混淪は則物立ちて見(あら)はるる貌なり。

三浦梅園『多賀墨卿君にこたふる書』より
『玄語』入門篇として知られるこの書簡、三浦梅園先生のお茶目っぷりに多賀墨卿も萌え狂ったのではなかろうか。「習気(じっけ)を排せ」「反観合一」といった鹿爪らしい御教示も良いけれど、「ぴちぴち」の一語で森羅万象を説き尽くしたこの一節はまさに白眉である。

3 件のコメント:

  1. 多賀墨卿の子孫が大分市に住んでいます。歯医者さんをしています。この書簡対の論文は、多賀家には残されていません。戦争で焼けたのかもしれません。「三浦梅園の謎を解く」というHPがあって、けっこう本格的に「玄語」の解読に取り組んでいますね。地元の人ならではの情念でしょうね。

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  2. 末代まで医に携わっておられるとは、やはり梅園もたじたじという学究肌の血のなせる技なのでしょうか。

    「三浦梅園の謎を解く」HPには私もお世話になっております。プリントアウトした玄語図を眺めてはにやにやしているのですが、この綺麗なバイナリツリー(二分木)を見るたび、ライプニッツのことを思わずにはいられません。

    約100年の隔たりはありますが、二人の易への注目や自然観といった共通点を見るにつけ、ユーラシアの西端と東端で同じ様なことを考えていたんだなぁ、と感慨深いものがございます。

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  3. Facebookに「三浦梅園研究フォーラム」があります。結構面白いですよ。最近はブリュッセル在住の友人と「多賀墨卿君にこたふる書」の英訳に取り組んでいます。もっとも私は英語はだめなので、原文の解釈を担当しています。この手紙は、弟子たちの閲覧用として書かれたもので、謎掛けが多いです。墨卿に宛てた書簡の方は、たぶん戦災で焼失したのでしょう。

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