2009年1月13日火曜日

[37signals] 他社は瀕死状態なのに Cook's Illustrated が繁盛している理由

(原文: How Cook's Illustrated thrives while others are dying)

全ての出版物が財政的に臨死状態にあるという訳ではない。

Cook's Illustrated は広告に頼ることなく、有料で料理レシピをオンラインで提供している。NYT の "Let's Invent an iTunes for News" という記事によれば、印刷された紙面の定期購読数は90万部(および店頭販売が10万部)、年間 $35 での購読となるデジタル版紙面は26万部と、2008年に30%にまで拡大したほどの繁盛ぶりだ。

多くの企業はこう考えるだろう「オンライン版のレシピに課金するなんてありえない。そんなものWeb上でタダで手に入るじゃないか!」と。そこを上手くやるにはCI(訳注: Corporate Identity)をどうやって構築していけばいいのだろう? "the Consumer Reports of food" に書かれている通りだ。Cook's Illustrated では台所用品の目隠しテスト結果や、細かい部分に至るまで徹底して配慮が行き届くよう何回となく推敲された料理レシピが提供されている。

“Why Cook’s Illustrated is different than other cooking magazines(Cook's Illustrated が他の料理雑誌と違っている理由)” でも、その完璧主義が大々的に謳われている「これ以上信頼出来る料理雑誌はありません。Cook's Illustrated が味を保証するチーズケーキを紹介するのは、編集スタッフが45点以上を付けた時だけなのです」。サイト利用者の半数が印刷物の方も購読しているということからも窺えるように、オンラインでレシピが見れるというのは重要なことである。

Cook's Illustrated の CI は、得意な分野に焦点を絞り、他の雑誌が触れている流行の料理といったものには手を出さないことで成功を収めている。Cook's Illustrated 編集長の Jack Bishop はこう語る
私たちの雑誌は多くの点において、時代にとらわれないものだ。最新の最も素晴らしいトレンドについて紙面で触れることは無いし、取材旅行に行く事も無いし、ロサンジェルスの最先端シェフに関する特集記事なんてものも無い。私たちが扱うのはおいしい家庭料理につながる技術や器具や素材に関するものであり、そういったものは月や年といった程度の単位では大きく変わらないものだ。
それだけではなく、この会社は他の今風な料理雑誌を敵に回してすらいる。創立者であり編集者である Christopher Kimball はこう書いている
見た目だけは立派な料理雑誌とは違い、私たちの雑誌は料理の記事が詰まっているし、編集者達はフードスタイリストなんかじゃない。
この会社はまた、料理の本やTV番組や雑誌や Web サイトといった複数のプラットフォーム上で自社コンテンツを活用する事により、あらゆる潜在的な収入源から上手いこと利益を得ている。この Web サイトには、他のサイトには無い、図解やビデオという切り札もある。G.L.Mazetta 社の料理研究家である Shea Rosen は、何故こういった図解やビデオが有益なのかという点についてこう語っている
ビデオや図解を提供するのは、どうやればきちんと出来るのかを人々に示す良い方法です。他のサイトでは鳥の骨の取り方を説明してくれるかもしれませんが、写真や図解やビデオはそれよりもはるかに判りやすい。もし野菜をきちんとさいの目に切る方法を知りたいというのなら、コックさんがどのように包丁を握っているかを見たくなるでしょうしね。

いかにも Cook's Illustrated らしい図解の一例 
Rosen は、他の月並みな料理サイトに比べて深く探求を行っている Cook's Illustrated の CI がお気に入りだ
料理研究には大量の情報が含まれています。卵白を泡立てる時にクリームタータ(訳注: 酒石酸水素カリウム。メレンゲの泡を保つ働きがある)を使う理由は?と言った感じのものです。レシピには「クリームタータを入れましょう」と書いてありますが、何故入れるのか不思議に思うことでしょう。彼らはこういった質問に答えてくれます。どうしてローストしたものは調理後、食卓に出すまで寝かせておく方が良いのだろうというのもあります。理由を知ると楽しいですよ。
というわけで、製品に課金する事は不可能だと考えているならば、成功へと通ずる CI というものについて考えてみることだ。競合他社よりも完璧に徹する、流行廃りに関係ないものを提供する、他のメディアでも上手く運ぶよう企画し直す、ビデオ(もしくはその他のテクノロジ)を利用して刷新を行う、より得意分野に特化する、といったことが可能だろう。こうすることによって、他社が課金することをあきらめているようなことであっても君なら課金を実施出来るような道が開けるのだ。

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