2010年3月27日土曜日

[DARING FIREBALL] 偉いさんの戦争

(原文: Generals’ War

先週の、エスカレートしつつある Apple - Google 間の争いに関する記事において、私はいくつかの微妙な点について言及するのを忘れていた。

ひとつは、私が議論しているのはあからさまな敵意についてであり、単なる競争についてではないということだ。Google と Apple は、特に Android 対 iPhone という観点から見て、そしてもうじきやってくる Chrome OS 対 iPad という観点から見て、ライバル同士なのか?という疑問があるということについてはこれまでも見てきたとおりだ。もちろん彼らは競合している。それは良いことであり、資本主義社会における企業の一般的なあり方である。私の言いたいのは、そういった競合とは違う何か、もっと悪意に満ちた何かが進行していると言うことなのだ。あからさまな敵意。「ライバル」と「敵対者」の違いだ。

もうひとつ、私が言及を怠っていたのは、これは重要だと私は思っているんだが、この事態は全て経営陣および管理職上層部レベルにおいてのみ発生しているという点だ。技術者たち(両社の)は戦の準備をしているわけでもないし戦を楽しんでいるわけでもない。私には情報提供者が両社に居て(Google より Apple の方が多く、当然のことながら、他社はさておき Apple のこととなると Google の方が多くなる)、そのほぼ全てが技術者であり非「経営陣」なんだが、状況を考察するにあたって「異様」という言葉がずっと私の頭に浮かび続けている。Apple で行われ Google が出席する会議、もしくはその逆、において経営者達が「喧嘩上等」という敵意と怒りに満ちた発言をするという異様な状況のことだ。

あからさまな敵意というのは両社の技術者においてはあてはまらない。これはあくまでも異様なのだ。両社には確固たる、そして明白な文化の違いというものがある。Apple の技術者達は Google の作るソフトウェは醜い(役に立つし、きちんとしてるんだが醜い)と考える傾向があるし、Google の「オマエのデータを全部よこせ」的戦略に疑念を抱いている。Google の技術者達は Apple はウェブを理解してない、少なくともウェブをプラットフォームと捉えていないと見なしており、そんなのは古いと考え、そして App Store における Apple の専制的な管理体制に腹を立てている。だが全般的に見れば、両社の技術者達は似たり寄ったりなのだ。Google のサービスを利用している Apple の技術者も、Apple のコンピュータを使う Google の技術者も大勢いる。

両社ともに、例の Microsoft 的な「全世界がオレの敵」という姿勢、すなわち手をつけたからには単に成功を収めるだけではなく競争そのものを根絶するまでとことんやるというあの姿勢を社風として培ってはいない。

これは偉いさんの戦争でしかないのだ。Apple と Google の一般社員は戦争を期待してなどいないし、予期すらしていない。

一方、Google は Apple ほど一枚岩な会社ではない。1月の iPad 発表の数日後に Apple で行われた「タウンホール」ミーティングで Steve Jobs が Google を視野に入れて発したコメントは多くの注目を集めることになった。John C. Abell が Wired でレポートした、又聞きに基づく言い換えなんかは特にそうだった。Abell がレポートし、他の情報路の大半が取り上げたものではこうなっていた:

Google について: 我々は検索事業に参入しなかった、と Jobs は語った。奴らは電話事業に参入した。勘違いするな、奴らは iPhone を潰したがっているのだ。そうはさせん、と彼は語る。

私が Wired にリンクを張った後、タウンホールミーティングに出席していたとある情報提供者が私にこう語った

彼が実際に言ったのは「Google のチームが我々を潰そうとしている」だった。企業全体がそうなのだと思わせるような言い方を彼は決してしていない。おおかた Android チーム限定だろう。

先週の記事の後、Apple にいる情報提供者が私にメールを寄越して、タウンホールミーティングにおける Jobs の発言は、Google には iPhone を潰そうとしている「とあるチーム」が存在するということを誇張して言っただけのことであり、Google 全体のことを言ったわけじゃないと何度も繰り返して語った。そうなのだ、Jobs はこの件についてムカついているように見えるが、その矛先は Google 全体ではなくむしろ Android という特定のターゲットに向いているというのは明白なのだ。

まぁ、そういった発言自体が事態を醜悪なものにしているのかもしれんが。


訳者コメント: この記事のすぐ後に、Jobs と Schmidt が仲良く(?)コーヒーを飲んでいるツーショットを載せた GIZMODO の記事を取り上げて "How about that." と言うあたり、ぬかりないですなぁホント。まぁ「火事と喧嘩は IT の華」ですし「火のないところに煙を立てる」のは、メディアが紙であれビットであれ、あらゆるマスゴミの得意とするところであり飯のタネですから、しょうがないっちゃしょうがないんですけどね。

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